Vol.19 汁物の極意

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投稿日:2014/10/15
どんなものを選んで・作って・食べればいいか、それが「大人の食育」。
口に入れてゴックンする前に、体に良い食べ方を知って 体の中からキレイになりましょう!

寒さを感じはじめるこの時期。あたたかい汁物が一段とおいしくなります。

和食の形式を表す言葉に「一汁一菜」や「一汁三菜」があります。
それぞれ「ご飯と1つの汁物に1つのおかず」「ごはんと1つの汁物に3つのおかず」という意味。
「一汁三菜」は、懐石料理の基本です。
日本人は、昔から‘四’という数字を嫌ったことから、一汁三菜と言われるようになりました。

また、「二汁五菜」や「二汁七菜」というのもあります。これは冠婚葬祭など正式な場で用いられる本膳料理の形式です。近頃、この本膳料理をいただくことは、少なくなりましたが、脚のあるお膳にいくつもの料理が所せましと並べられた光景を想像していただけることでしょう。

これらの言葉からも、汁物は和食に欠かせない大切なもの。
和食は季節感を大事にしますが、特に汁物は、1つのお椀の中に季節をぎゅっと綴じ込めた和食のシンボルと言えるものです。

■ 汁物の基本要素

1)椀種(わんだね)
汁物のメインになる具材のことで、ごちそう系のお椀の場合は、白身魚やエビ、鶏肉、しんじょ・つみれなどの練りもの。普段使いは、豆腐や卵、麩など。主にたんぱく質の食材が使われます。
選ぶポイントは、まず、季節感が出るものですが、だしのおいしさや風味を活かすという意味でも、脂の少ないもの、香りのきつくないもの、汁が濁らないものを選びます。

2)椀妻(わんづま)
「妻」という名の通り、椀種の添えものとなるものです。簡単に言えば、野菜です。

まず、彩りとして、ほうれん草、きぬさや、いんげんなど「青み」の野菜。
他、わかめ、たけのこ、わらびなど、季節のものを選びます。


椀種との釣り合いも考え、切り方や大きさを工夫します。

さらに、三つ葉、せり、うど、みょうがなど、香りがあるものを使う時もあります。
椀妻は、「あしらい」とも呼ばれます。

3)吸口(すいくち)
これは、お椀の蓋を取った時、ほのかに香るもの。「香りのもの」とも呼ばれます。
代表的なものは、ゆずです。たとえば、春~夏は青ゆずを、秋~冬は黄ゆずを使います。

ゆずの飾り切り。
左「松葉」右「折れ松葉」

他、木の芽、山椒、ふきのとう、こしょうなど、椀種や椀妻と合うものを選びます。
汁物をいただく時、吸口は、最初にゴックンしてしまわずに、お椀の縁に添えて香りを楽しみながらいただきましょう。

これらの3つの要素を巧みに組み合わせ、お椀の中に季節感を出すのが、和食の汁物の極意です。

たとえば、「海老しんじょ・焼き椎茸、結び三つ葉・ゆず」、また、普段のお味噌汁でも「豆腐・わかめ・ねぎ」などの組み合わせは、この3つのベストマッチ。
また、春には、筍と木の芽、秋には松茸とゆずなど、定番といえる組み合わせは、この方程式からきています。

■ 汁物を分類すると…

和食の汁物は、「すまし汁」と「みそ仕立て」に分けられます。
すまし汁は、お吸い物、おすましのこと。基本、醤油で味付けします。
あらかじめ具材をお椀の中に仕込んで、熱い「吸い地」を注ぎます。
「吸い地」は、「椀づゆ」や「吸いだし汁」とも言い、だし汁に塩や醤油、酒などで味を整えたもの。

醤油味の汁物の場合、味付けの基準は、だし4カップに塩小さじ1弱、醤油大さじ1程度。
これで5人分の汁物ができます。1人分のだしの量は180mlですので、基準の量を参考に塩と醤油を加減します。
「すまし汁」の時、だしは、「一番だし」を使います。「一番だと」というのは、かつお節や昆布を使って取るだしで、「一番だし」を取った後のかつお節や昆布から取るだしを「二番だし」と呼ぶことに対し、最初に取るだしなので「一番だし」といわれます。

「季節の野菜椀盛り(わんもり)」
プロが作った汁物は、ご覧の通り。お品書では「煮物椀」となります。
銀漆のお椀も野菜を豪華に引き立てます。

また、魚介を使い、塩味だけで仕上げたものを特に「潮汁(うしおじる)」といいます。
鯛やはまぐりなどがおなじみですが、しじみなどでも潮風にできます。

そして、もうひとつの「みそ仕立て」は、みそ汁のことですが、お客様用としてみそ汁を出す場合は、「みそ吸い物」と呼ばれます。みそ仕立ては、味が濃いので、「二番だし」でも構いません。

本格的な作り方は、みそをすり鉢で擦ってから使います。こうすると、みその風味が際立ちます。
みそ仕立てにも様々な分類があり、「合わせみそ仕立て」は、白みそと赤みそを合わせたもの。
季節や具材によって白と赤の配分を加減します。

「切りみそ仕立て」は、粒みそを擦らずに切って仕立てます。かすは濾し取ります。さらっとした味が楽しめます。

「洗いみそ仕立て」は、すくい網などに粒みそを入れ、だしの中に沈め、箸で洗いだします。
汁の色も薄く、みその味と香りがするお吸い物といったかんじです。

さらに、白みそや甘口のみそで具材をこっくり煮込み、濃く仕立てたものを「濃漿(こくしょう)」といいます。
いつものみそ汁にも様々な仕立て方があります。

そして、汁物の味付けは、酒→塩→醤油→味噌の順が基本です。
まず、だしに酒を入れてアルコール分を飛ばし、塩・醤油・味噌の順。味の薄いものからつけていきます。こうすると、味が濃くなってしまう失敗がなく、上品な仕上がりにできます。
ごはんに合わせる時は濃い目に、お酒に合わせる時は薄めにするのもポイントです。

この他、けんちん汁や豚汁、粕汁など、煮込むことによって具材から出る持ち味を活かしたものもありますし、三平汁、のっぺい汁、船場汁、さつま汁のような日本各地の郷土料理にも、特徴的な汁物があります。

■ 汁物の健康効果

何より、温かい汁物をいただくと、ほっとします。身も心も癒され、おいしさが染みわたります。
同時に、安心感やしあわせ感など、汁物はメンタルヘルスにも効果があるといえるでしょう。

また、人の体内にある消化酵素は、およそ37度で一番活発に働きます。汁物をいただくと体温が上がり、消化酵素が活性化し、栄養の吸収も高まります。さらに、体温が上がることは、免疫力のアップにもつながります。

特に、朝は、体温をしっかり上げることが大切。その理由は、体は、体温がアップして目覚める~です。
温かい汁物を朝ごはんにいただいて、体温を上げましょう!
体温がうまく上がらないと、午前中、体が思うように動かず、頭もぼーっとしてしまいます。
野菜ジュースやスムージーも悪くはありませんが、体を目覚めさせるという点では、温かい汁物のほうが優れています。

また、同じ温かい飲み物では、スープもありますが、和食の汁物がスープより勝る点は、「低カロリー」と「食物繊維が取れる」こと。
スープには、牛乳やバター、野菜を炒める油やベーコンなどの脂肪が含まれます。つまり、カロリーがあります。一方、汁物のだしは、脂肪がほとんど含まれないので、カロリーはほぼゼロです。

食物繊維の点からも、汁物では根菜類がよく使われるほか、昆布から出るヌメヌメした成分は、水溶性食物繊維の一種で、排便を促すなどいろいろな健康効果があります。
汁物は、「和食の底力」といえるでしょう。

■ 汁物とお椀

最後に、汁物をいただく食器について。日本の汁物は、木のお椀でいただきます。

木のお椀は、自然に寄り添う和食ならではのもの。
陶磁器や金属の食器と比べ、木のお椀は熱さを伝えにくくなっています。
つまり、手に持って、直接口に運ぶことができるのです。

その結果、日本は基本、お箸だけで食事をします。同じ箸文化でも、中国ではレンゲ、韓国ではスッカラという金属のスプーンがありますが、日本が箸だけなのは、木のお椀が発達したから。
正確に言うと、お椀と漆文化の影響です。熱いものを熱いまま口に運ぶことができるお椀があったおかげで、日本人は‘熱いもの好き’なのかもしれません。

これからの季節、汁物が一段とおいしくなります。
ぜひ毎日の食事に汁物を添えて、身も心も養っていただきたいと思います。

清水 千佳子

食育インストラクター/健康管理士一般指導員/FM Radio Program Director
日本成人病予防協会 専任講師 http://www.japa.org/?page_id=8057
正しい味覚を持つ子に育てる食育教室“テーブルルネサンス”代表講師

2005年、食育基本法の成立とともに食育の取材を開始。
ラジオ番組『服部幸雄の食育の時間』Japan FM Network(FM東京系列) 制作ディレクター
地元では杉並区食育推進ボランティアとして食育企画を立案・実施。
リマ・クッキングスクール(マクロビオティック料理)在籍。女児の母。




1 Comment

KIMIKO

2016年6月21日 at 5:08 pm

「汁もの」が和食の要ということが、よくわかりました。朝ごはんのお味噌汁、もう一度見直したいものです。

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